コンサルタントコラム

2月号「賃金設計の悪手」 担当 森

投稿日:2023年02月15日

人事制度の中でフルオーダーメイド型となる賃金設計こそ、その企業の実態をよく見た提案が必要になります。

ケース①「ガラガラポン」
賃金体系をシンプルにしたいがために、全手当を廃止し基本給に吸収したい、いわゆるガラガラポンですが、本当に手当を廃止していいのか?を十分に検討する必要があります。
これまで家族手当を支給していたのを廃止するのであれば、家族に対する、または家族が増えたことに対する恩恵は無くなります。
従業員目線では「家族が増えたことのお祝いが無くなった…」と捉える方もいます。
共働き世帯が増えたことで家族手当を廃止するという経営者の思いは理解できます。
しかし、従業員の捉え方は世代間で違う傾向にあります。
諸手当は「仕事要素」と「生活要素」があります。
会社の思想として保たれていたこの2つのバランスが崩れるとき、不利益変更対応は勿論のこと、経営者のメッセージや丁寧な移行措置・経過措置が必要となります。

ケース②「初任給アップ」
春闘が始まり中小企業でも初任給をUPしたいという要望が増えています。
 ・2022年4月の大卒初任給210,000円 → 2023年4月の初任給を220,000円にUP
このケースでは2022年4月入社と2023年4月入社の社員で逆転現象が起こります。
更に一昨年入社した(2021年4月)社員は?という問題が出てきます。
直近○年入社者のどこで逆転現象が起こる分岐点なのか? その分岐点に対してどういうルールで調整ベアするのか?を検討する必要があります。
「全員10,000円UPすればいい」という策しかもっていないケースも見られますが、中小企業にとっては特に検討が必要です。
全員ではなく上記のように入社○年以内の限定ベア調整も手法の一つとして有効です。

ケース③「インフラ手当」
物価上昇にともないインフラ手当を何らかの形で支給したいという企業が増えています。
 ・基本給加算・手当加算・賞与加算・一時金 等の支給方法が考えられます。
物価は上昇があれば下降もありえるため、一度支給した手当は外しにくいケースが出てきます。
また、人件費には財源があるため、どこから原資をもってくるのか?という視点も必要になります。
中小企業はなかなか価格転嫁できない実情があります。
そこで、人件費の内転機能として「賞与の原資を月給にもっていく」という考え方もあり得ます。
これまで業績配分としてバッファで持っていた賞与分を月給にもっていくことで「生活に関わる月給に多く配分する」というシフトに変更することになります。

以上

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