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第52話「残業時間の限度基準について」

投稿日:2003年05月01日

労働基準法では、原則として1日、1週、1ヵ月、1年のそれぞれの期間において労働時間の上限を定めています。この上限時間が法定労働時間です。労働基準法においては、その法的労働時間を超えて労働を行うことを原則的には禁止しています。

そこで、どうしても残業の必要がある場合で法適要件を満たした場合にのみ残業が法的に認められることになります。ただし、残業時間の上限に関 しては、過重労働防止など職員の健康等を配慮して厚生労働大臣が「限度時間に関する指針」を出しています。「行政官庁は、この指針に対して使用者及び過半 数代表者に対して職場の健康管理など、必要な助言及び指導ができることになっています。

≪原則的な限度時間≫

期 間 1週間 2週間 4週間 1ヵ月 2ヵ月 3ヵ月 1年間
限度時間 15時間 27時間 43時間 45時間 81時間 120時間 360時間

1.目安時間として計算する時間
この行政指導において定められている労働時間を延長することのできる限度基準とする時間は、法定労働時間を超えて時間を延長して労働した時間です。

2.私用外出や遅刻などがある場合の時間計算
労働基準法で定める労働時間は、実際に汗水流して働いた実労働時間です。法定時間外労働が認められるのは、この実労働時間です。所定労働時間中に私用外出した時間や始業時刻に遅刻をした時間など、実際に使用者の指揮監督下において労働に従事していない時間は除いて計算します。その実労働時間が1日8時間(原則)を超えた時刻から残業時間はスタートです。

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3.残業の制限を受ける者
  次の要件に該当した場合は残業禁止となります

該当者 要 件 禁止・制限の内容
妊産婦 請求行為 時間外労働・休日労働・深夜労働の禁止
一定要件にある子を養育する労働者 請求行為
  1. 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男女労働者(管理監督の地位にある残業時間の制限を受けない者も含まれます)に1月24時間1年150時間を超えた労働時間の延長禁止
  2. 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男女労働者(管理監督の地位にある残業時間の制限を受けない者も含まれます)の深夜労働の禁止
要介護状態の家族を介護する労働者 請求行為
  1. 要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者(管理監督の地位にある者を含む)からの請求があった場合には、1月24時間1年150時間を超えて残業時間を延長禁止
  2. 要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者(管理監督の地位にある者を含む)からの請求により深夜労働を禁止
18歳未満の年少者 法規の定めにより強制行為 変形労働時間制(原則)・時間外労働・休日労働・深夜労働(交替制で使用する16歳以上の男子の場合は除外)

注1:    禁止される労働時間とは、法定労働時間(原則一週40時間1日8時間)を超える労働のことをいいます。
注2:   禁止される休日労働とは1週1日もしくは4週4日の法定休日をいいます。
注3:   深夜労働とは、午後10時から午前5時までをいいます。

4.残業時間の制限除外者(労働基準法第41条第2号の該当者)

管理監督の地位にある者は、労働時間、休憩時間、休日の適用を除外しています(労基法第41条)。ただし、管理監督の地位にある者であっても、深夜労働と年次有給休暇の適用は除外されていませんから注意が必要です。
残業時間の制限を除外される管理監督者の要件は次のとおりです。

>管理監督者の残業時間適用を除外要件

(1)   部長、課長など、事業経営者と一体をなし、経営及び従業員について管理的立場にある者であって、使用従属関係上の拘束が一般労働者に比較して弱く、これらの一般労働者を使用者(事業主)に変わって指揮監督する者またはそれと同等のスタッフ職の者であること

(2)   職務の性質上、労働時間、休憩及び休日に関する規定の枠を超えて働くことが要請されていること

(3)   労働時間(始業・終業時刻など)についての拘束を受けておらず、自己の判断によって自由に出社、退社、休憩を取れる自由裁量権限があること(タイムカードなどの時間管理の拘束がなく、自由裁量によって勤務時間が決定できる立場にあることが必須要件)

5.法定時間外労働と所定時間外労働の相違

c(1)所定時間外労働のみの場合(36協定は不要)

    ◆     就業規則に規定する所定労働時間:始業9時00分~終業17時00分(7時間)
    ◆     所定労働時間7時間+残業1時間=1日の労働時間8時間=法定労働時間8時間

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(2)所定時間外労働と法定時間外労働のどちらも成立する場合(要36協定)

    ◆就業規則に規定する所定労働時間:始業9時00分~終業17時00分(7時間)
    ◆法定時間内残業1時間+法定時間外残業1時間
    ◆所定労働時間7時間+残業2時間=9時間-8時間=1時間(法外残業時間)

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(3)法定時間外労働のみが成立する場合
    ◆所定労働時間8時間+残業2時間=10時間-8時間=2時間(法定時間外労働)

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6.割増賃金算定の基礎となる賃金

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7.時間外、休日及び深夜の割増賃金

 労働時間  割増率
 法定時間外労働(法定労働時間を超えて働いた場合)月60時間まで 125%
法定時間外労働(法定労働時間を超えて働いた場合)月60時間超
※中小企業については平成25年3月31日までは猶予される
150%
深夜労働(PM 10:00~AM 5:00) 25%
法定時間外労働+深夜労働 150%
法定休日労働+深夜労働 (PM 10:00~AM 5:00) 160%
法定休日労働 135%

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