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第29話「あたらしく従業員を採用するときの 留意点」

投稿日:2002年07月16日

~採用の変革~
働きたい人から働いて欲しい人へ
時代が変わればお客さまの考え方も変わります。
会社もそこで働く人達も変わらなければお客さまからリストラされてしまいます。
これからの時代を生き残る強い会社になるためには、あたらしい時代にチャレンジするわが社の力となる人材の採用が必要です。

1.採用に関する留意点
(1)高齢化社会や労働力の流動化に対応するため、募集・採用に関し、年齢に関わりなく均等な機会を与えるために、年齢制限が緩和されました。
(2)募集・採用に関して「女性のみ募集」等女性を差別的に取り扱うことが原則として禁止されています。
(3)採用について制限される(提出を求めてはならない)書類等
→戸籍謄(抄)本の提出・社用身上書の使用・身元(家族)調査・家族の職業、家族関係、家族の地位、学歴、収入・家族の資産・住居状況(部屋数、間取り、道順)・宗教・支持政党・生活信条・尊敬する人物・思想・本籍地、生まれ育った場所・作文(生い立ち、私の家庭、父を語る等社会生活環境に関するもの)等
(4)就業規則において、採用時の提出書類の期限をはっきり決めていますか。
書類の提出が遅い人に、積極的に入社の意志があると判断できるでしょうか?
例:採用後7日以内に就業規則第○条に定められた書類を提出すること。
Q:入社に関する必要書類の提出拒否は可能か
A:「採用に関して必要書類を提出しないのは、企業における従業員としてルールを守らないことであり、使用者の命令や社員の義務を果たさないことといえる。」
(最高裁判例)

2.採用後の留意点
(1)労働契約書の交付
→労働者を雇い入れた場合は労働契約書を結んで、労働条件の確認を行なう事が労使の信頼関係の基本となります。労働条件を締結することによって、労働者には働くための時間提供が、会社には労働の対償として賃金支払義務が発生します。
→雇用期間(期間を定める場合はその期間:原則1年以内・60歳以上は3年以内の期間)の明示を明確に記載します。期間を定めても、自動更新を繰り返す場合は、期間の定めのない契約とみなされます。
→注:就業の場所及び従事する業務の種類を必ず明示して下さい。賃金や時間等についての規定があれば就業規則を明示することでOKです。

(2)就業規則の明示
→労働者を雇い入れたときは、就業規則等を明示して、会社のルールの十分な理解と遵守義務を図る事が人材育成のスタートです。服務規律や休職規定は必ず明示が必要です。
→お客様の立場にたって考えることのできる従業員を育てることが、これからを生き残るためにも不可欠です。また休職規定は、従業員が元気で入社してきた時に知らせるのが、後日のトラブル未然防止には最適です。
→就業規則は事業所の見易い場所へ掲げる等、労働者への周知させなければなりません。時代が変われば法律も働き方も変わります。就業規則も最新バージョンへ変えて行きましょう。

(3) 社会保険・雇用保険への加入
→社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険への加入手続きを行います。
→加入の時期は働き始めた年月日です。試用期間や見習い期間を経過してからの加入や本人が希望しないからといった理由による未加入は法律違反です。
→会社や本人が希望するといないとに関わらず、働き始めた日が資格取得日です。
→健康保険の被扶養者となることのできる配偶者は、国民年金の第3号被保険者となります。
→平成14年4月から第3号被保険者の届い出義務が事業所責任となりました。届出の漏れのないようにご注意下さい。
→60歳以降の人を雇い入れる場合には、高年齢雇用継続基本給付金の申請が必要な場合もあります。高年齢雇用継続基本給付金は事業所ごとに定められている申請月以外の請求は認められません。申請漏れのないよう入社時の確認が必要です。
→社会保険料は入社の月分を翌月に徴収(7月1日入社20日〆末日支払いの場合:8月支払給与分より7月保険料を控除)、雇用保険は入社の月から徴収します。

(4)賃金の口座振り込み依頼・同意
→労働者が口座振込み等による給与の支払い方法を希望もしくは同意をする場合は賃金口座振込協定書・口座振込依頼書を締結します。

(5)労働者名簿・賃金台帳・タイムカードの整備
1)労働者名簿:各事業場ごとに調整し次の事項について記入、変更があった場合においては遅滞なく訂正が必要。(労働基準法第107条)
→氏名、生年月日、性別、住所、従事する業務の種類(規模30人以上)、雇い入れの年月日・退職の年月日・死亡の年月日及びその原因
2)賃金台帳:各事業場ごとに調整し次の事項について賃金支払いの都度遅滞なく記入しなければならない。(労働基準法第108条)
→氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、時間外労働時間数及び深夜労働時間数、休日労働時間数及び休日深夜労働時間数

(6)雇い入れ時の健康診断(安全衛生法規則第43条)
→常時使用する労働者を雇い入れる場合は医師による健康診断が必要です。
→但し、医師による健康診断を受けた後3ヵ月を経過しない労働者を雇い入れる場合は、その健康診断の結果を証明する書面を提出すれば雇い入れ時の健康診断に替えることができます。

(7)雇い入れ時等の教育(安全衛生規則第35条)
→労働者を雇い入れたとき及び作業内容を変更したときは、安全衛生に関する必要な事項について、教育を行なわなければなりません。
1)整理、整頓及び清潔の保持
2)事故等における応急措置及び退避に関すること  等

(8)クーリングオフの期間(労働基準法第21条第4号)
→働き始めてから14日間は試みの使用期間です。採用時の面接等における印象や働き方が履歴書に記載してある得意技とずれていたり、入社早々から遅刻や早退が目立つ場合等、会社が労働者のやる気等、これからの働き方に不安や不満を抱いて解雇をしたいときは、働き始めてから14日以内であれば解雇予告も解雇予告手当も不要です。
→入社早々だからこそ、新入社員であればこそ、誰よりもはやく出社して、同僚の名前や仕事を覚える努力をしなければなりません。14日間は品質確認の期間です。

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