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第60話「労働基準法改正による解雇規定の整備」

投稿日:2003年10月31日

現在、一部には解雇は自由であると思っている事業主や、何らかの理由があれば常に解雇という厳しい措置がとれると考えている事業主も多いことから、合理的な理由のない解雇やいきすぎた解雇、不用意なとっさの考えの食い違いによる解雇も見られます。
反面、日本ではいったん労働者を雇うと実質的に解雇することは難しいと考えている事業主も多いことから解雇に関するトラブルが多くなっています。
そこで、解雇をめぐるトラブルの防止・解決に資するために、解雇に関する基本的なルールを明確にすることが求められていました。
今回の労働基準法の改正では、解雇に関する理由の明記を法文上明確にしたものです。

1.解雇権監用法理の明記(第18条の2)

解雇のルールについては、解雇権濫用法理が最高裁判例として確立しているものの、これまで労使当事者間に十分に周知されていなかったきらいがあるので、 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」として法文上明確にし ました。

解雇権濫用法理とは、昭和50年の最高裁判決において示されたもので、使用者の解雇権の行使も、「それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効となる」とするものです。

2.解雇理由の明示(第22条第2項)

「解雇を予告された労働者は、解雇前においても、使用者に対し、当該解雇の理由について証明書を請求することができる。」ことになりました。

この規定は、解雇予告をした使用者が、労働者の請求に基づいて、遅滞なく解雇理由に係る証明書を交付しなかった場合に罰則を課す効力を有する規定ですが、 使用者が解雇理由を明示しなかった場合や明示した解雇理由を後日変更したような場合には、当該解雇の合理性の判断を否定する有カな要素となると考えられま す。

3.就業規則に「解雇の事由」を記載(第89条第3号)

労使当事者間において解雇理由やその範囲を事前に承知しておくため、就業規則の必要的記載事項に「解雇の事由」を含めました。

労働基準監督署における就業規則の届出の受理に当たっては、「解雇の事由」ができる限り明確に記載されるよう、モデル就業規則を活用すること等により、使用者に対して必要な相談・援助を行うとされています。

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