> 労働災害が発生したときは、次のような会社責任が生じます。
(1) 労働基準法に基づく「災害補償責任」
(2) 民法に基づく、労働契約上の「安全配慮義務責任」
労働基準法は、労働者が業務中に被災した場合について、使用者責任として災害補償を義務づけていますが、その労働基準法に基づく災害補償責任は、労災保険法の履行により使用者責任が免れることとしました。つまり、個々の使用者の補償義務を使用者に代わって国の責任として具体化したのが「労災保険法」です。
労災保険による災害補償制度は、使用者の無過失責任を原則とする楠償責任を前提としており、使用者責任の有無に関わらず、その事故に「業務遂行性」と「業務起因性」があれば、業務災害として労災補償を行うものです。
労災保険による補償の性格は、損害賠償的であるよりは、治療費等を除いて本人や遺族の所得補償を意図しています。
業務災害に対しては、労災保険法上の補償とは別に、一般的には民事上の損害賠償責任が生じます。この考え方は、労働者を雇入れたからには、使用者は労働者を災害から守る義務があるとするものです。被災したことは、結果として安全配慮義務を守らなかったからであり、使用者が労働者を災害から守るべき義務の債務不履行によって発生したとするものです。
民事上では次のような事業主責任が問われことになります。
1. 債務不履行責任(民415)*安全配慮義務違反といわれるもの
・ 労働契約上、使用者は労働者の生命及び健康を危険から保護し、安全に労働させる義務があるとされる。
2. 不法行為責任(民709)*注意義務違反といわれるもの
・ 故意や過失により他人に損害を与えた場合は、損害を補償しなげればならないのが過失責任の原則であり、注意義務を欠くことは過失とされる。
3. 使用者責任(民715)
・ 業務遂行のための指揮命令中に労働者が災害を受けた場合は、自動的に使用者責任が生ずるとするもので、いわゆる無過失責任である。
4. 注文者責任(民716)
・ 元請、親企業の安全配慮義務が問われることになる。(安衛法29~31)
5. 運行共用者責任(自倍法3)
・ 社有車が事故を起こした場合は事業主も責任を問われることになる。