平成16年1月1日から、契約期間を原則1年から3年に延長などに加え、有期労働契約、解雇のルールなどについて、労働基準法が改正されました。今回の改正の留意事項は、労働契約の終了等に関し、その理由を明記する義務を事業主に課していることです。
会社は従業員の勤務態度に強い不満があるため、「もう、来なくていいよ」といった理由だけでは、1年以上引き続いていた労働契約の更新拒否や解雇を行うことができなくなったのです。
ますます、職場の管理の重要性が求められます。職場管理の基本は、就業規則の活用です。いくら立派な就業規則が存在していても、実際に活用されていなければ「宝の持ち腐れ」です。
>改正事項
1.契約期間
原則 | 例外 | |
契約期間の上限 | 3年 | 5年 |
要 件 | (1)高度の専門的知識を有する者 (2)60歳以上の労働者 (労働契約締結時において60歳以上であること |
注1 施行後3年を経過したときに、その施行の状況を勘案して検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
注2 1年を超える期間を定める労働契約を締結した労働者(原則の適用者)は、注1の見直しが講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、労働契約の期間が1年を経過した日以後は、申出によりいつでも退職することができる。
注3 注3 期間満了時の紛争を未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の満了に係わる通知に関する事項等を厚生労働大臣が定める。また、行政官庁は、使用者に必要な助言又は指導を行うことができる。
2.改正の要点
有期労働契約の締結時及び満了時に使用者が構ずべき措置についての基準を厚生労働大臣が定めることができる根拠規定が新設され、それに基づき「有期労働契約の締結・更新及び雇止めに関する基準」が告示で定められました。
◆《厚生労働大臣告示》平成15年公正労働省告示357号
有期労働契約の締結・更新及び雇止めに関する基準
(1)契約締結時に、次の事項を明示しなければならない。
・更新の有無
・判断基準
・契約締結後変更の場合はその旨
(2)1年を超える継続勤務者について契約更新をしない場合は30日以上前までに予告をしなければならない
(3)1年を越える継続勤務者について契約更新をしない場合に労働者がその理由の証明を請求したときは交付しなければならない。
(4)契約を1回以上更新し、かつ、1年を超える継続勤務者について、更新の際、契約の実態や労働者の希望に応じて、契約期間をできるだけ長くするように努めなければならない。
3.解雇について
(1)現行の解雇に関する規定の前に、次の条文(法18条の2)が挿入されました。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」
注1「客観的に合理的な理由がある場合」「社会通念上相当な理由がある場合」についてはあくまでも裁判所が判断する。
注2個別労働紛争に対し労働基準監督署では、代表的な判例を周知する。
(2)就業規則の絶対的必要記載事項としての「退職に関する事項」に、「解雇の事由」を記載しなければならないことになりました。したがって、解雇の事由が記載されていない場合は、就業規則の変更届が必要です。
◆解雇権濫用法理
「使用者の解雇権の行使も、それが客観的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効にする」
昭和50年最高裁判決(日本食塩製造事件)。その後の判決においても踏襲・確立している。
4.職時等の証明について
解雇を予告された労働者は、解雇前においても、使用者に対し、その解雇の理由について証明書を請求できることになりました。解雇に関する個別紛争の未然防止を図ることから、使用者は労働者からの請求に対し遅滞なく交付する義務が生じるようになりました。(法22条の1項2項)
(1)退職(解雇)の場合、退職(解雇)後の請求が可能
(2)予告解雇のとき、予告後直ちに交付請求が可能
◆退職時の証明書
使用者は労働者から退職時の証明を請求された場合は遅滞なく交付する。
◆退職時の証明事項(労働者が請求した事項に限る)
>使用期間
>業務の種類
>当該事業における地位
>賃金
>退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあってはその理由を含む)
※解雇を予告された場合は、解雇前でも解雇理由の証明書を請求できる
5.就業規則・労働契約へ解雇の事由を記載
(1)就業規則の記載事項として、「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」と定められました。(法89条3)
(2)労働契約締結事由の明示として、「退職に関する事項(解雇の事由を含む)」と定められました。(規則5条4号)