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第71話「労働契約と配慮義務」

投稿日:2004年03月04日

会社に採用され労働契約が成立すると、その労働契約の基において、無関係な他人ではなく、会社の従業員として、会社と従業員はともに社会的、論理的な義務に従うことになります。

判例:   「労働契約が成立した後は、勤労者は事業主に対して約束の労務を提供し、企業主は、約束の金銭によって対価の支払いをする契約の直接的内容の実現のみでなく、事業主は人間の社会一般に妥当すべき社会的、論理的義務に従うべき約束をうけるものである」

これによって、会社の行う各種の福利厚生や生活扶助的な配慮、従業員の親睦会や共済制度が生まれ、慶弔行事への会社や同僚の援助等の根拠が生ずるとされています。
このような保護配慮義務は、法的拘束力のない社会的論理的なものが多いと考えられるでしょうが、それが「セクハラ」のように社会的な認知を受ければ、法的な拘束力をもってくる場合があります。それが職場における「安全配慮義務」です。

判例:   「雇用契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払いを、その基本内容とする有償双務契約であるが、通常の場合、労働者は、使用した場所に配置され使用者の供給する施設器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、労働者が労務提供の為に設置する場所、設備もしくは器具を使用し、又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命、及び身体を危険から保護すべき義務(安全配慮義務)を負っているものと解するのが相当である」

会社が人を従業員として採用すると、特別な取り決めをしなくても安全衛生法や労働基準法を守って使用する義務が生ずることは当たり前のことですが、労働契約において、使用者には「安全衛生上の管理を尽くして働かせます」という義務が発生するのです。

この義務はいわゆる職業病の防止義務だけにとどまらず、一般健診を中心とした健康管理についても、安全配慮義務の「具体的内容として、労働時間、休憩時間、休日、休憩場所等について適正な労働条件を確保し、さらに、健康診断を実施した上、労働者の年齢、健康状態に応じて従事する作業時間及び内容の軽減、就労時間の変更等適切な措置をとるべき義務を負うというべきである」とされています。

使用者が、安全配慮義務を怠ったたことが原因で、労働災害が発生すると、労災保険とは別に、民法上の損害賠償義務が発生することになります。

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