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第73話「年金改革:給付と負担の変化は」

投稿日:2004年06月29日

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◆第3行被保険者の未加入救済 2005年4月から
会社員の妻で専業主婦の人は「第3号被保険者」と呼ばれ、自らは保険料を納めないが、老後に国民(基礎)年金を受け取れる。第3号被保険者の届け出は 2002年4月以降は夫の勤める会社がやってくれる。それ以前は個人で市町村に届け出ていたため、届け出忘れで年金を受け取れない事態が起きている。
Aさんの母にも86年から5年分の届け出忘れ期間があった。このままでは5年分が「未加入」となり65歳から受け取る国民年金が減る。しかし、2005年4月から救済策がスタート。申請すれば過去の届け出忘れは帳消しになる。

◆30歳未満の配偶者の遺族厚生年金を有期年金とする 2007年4月から
厚生年金の加入者が亡くなった場合、その配偶者は遺族厚生年金を終身で受け取れる。ただ、2007年4月からは子供のいない30歳未満の女性が受け取る遺族厚生年金は5年の有期年金となる。たとえば、B子さんの息子が結婚して死亡、妻が30歳未満ならこのケースがあてはまる。
Aさんの父が亡くなった場合、母は結婚期間中はずっと専業主婦だったので夫の厚生年金の4分の3を受給できる。仮に働いていた時期があれば妻が自分の厚生年金を受給したうえで、夫の厚生年金の4分の3の方が高いなら差額を遺族厚生年金として受け取る。

◆離婚時の老齢厚生年金の分割が可能 2007年4月から
2007年4月以降、離婚して話し合いや裁判で分割に合意すると、妻の取り分は最大で2分の1まで別口座に振り込まれる。妻が厚生年金に加入したことがあれば、双方の受給額が同額になるまで分割できる。
2008年4月以降、会社員の夫と妻が専業主婦の夫婦を対象に新たな分割制度が導入される。離婚などを理由に施行日後の妻が専業主婦だった期間について、夫の厚生年金の半分を自動的に受け取ることができる。

◆フリーターなど20歳代の低所得者を対象 最長10年の保険料免除
2005年4月から
「バイト代から保険料を払う余裕なんてないよ」。Bさんの息子(22歳)はフリーターで、収入も不安定。月額13,300円の国民年金保険料は納めていない。国民年金は25年加入しないと老後の受け取り資格が生れない。未納を続けると40歳以降になって慌てても受給は難しい。
2005年4月からフリーター向けの未納対策が始まる。30歳未満を対象に最長10年の保険料を免除する。将来、保険料を納め直せば本来の年金額を受け取れる。免除基準となる所得額は未定だがBさんの息子も対象となるかもしれない。
免除制度は広がる見通しだ。現在は子供2人のモデル世帯だと164万円の所得を目安に保険料を全額免除、約285万円で半額を免除する制度がある。2006年7月からは2段階の免除制度を4段階に細かく分ける。少しでも年金を払いやすくして未納・未加入を減らす考えだ。

◆育児休業中の保険料免除期間の拡大 2005年4月から
2005年4月から育児休業での保険料の免除期間も1年から3年に広がる。Aさんの妻(33歳)は子供が小さいので働く時間を抑えている。収入が減ると納める保険料も少なくなり年金額も減る。今後は子供が3歳までの間の分について、以前の収入に応じた厚生年金を受け取れる。

◆受給開始繰り下げ可能 2007年4月から
受給を繰り下げたモデル世帯の年金月額の目安(単位:万円)

受給 夫 婦 の 生 年
1944年
(60歳)
1949年
(55歳)
1954年
(50歳)
1959年
(45歳)
65歳
から
24.4 25.2 26.5 28.6
66歳
から
26.3
(+1.9)
27.2
(+2.0)
28.6
(+2.1)
30.8
(+2.2)
67歳
から
28.3
(+3.9)
29.2
(+6.3)
30.7
(+4.2)
33.1
(+4.5)
68歳
から
30.5
(+6.1)
31.5
(+6.3)
33.1
(+6.6)
35.7
(+7.1)
69歳
から
32.4
(+8.0)
33.5
(+8.3)
35.3
(+8.8)
38.0
(+9.4)
70歳
から
34.6
(+10.2)
35.2
(+10.0)
37.6
(+11.1)
40.6
(+12.0)

≪年収800万円の50歳サラリーマンへの年金改革の影響≫
    
     厚生年金に加入中のAさん(36歳)、Bさん(50歳)は現在年収の13.58%の保険料を事業主と折半負担している。今回の改正によって、今年の10月から毎年0.354%ずつ保険料率が上がる。
・  保険料率が上がるための家計への影響は
    
(1)  年収470万円(月収30万円、ボーナス110万円)のAさんの場合
    保険料額・・・638,260円/年 → 654,898円/年
給与から天引きされる本人負担分=8,319円増/年
(2)  年収800万円(月収50万円ボーナス200万円)のBさんの場合
    本人負担分年間保険料額 14,160円増加
    毎年同じペースで14年間増え続け、2017年度の保険料率は18.30%となり、Aさん、Bさんともに年収が同じとするなら本人負担分はAさんが約11万円、Bさんが約188,000円負担が重くなる見通し。
    
■  年金改革のポイント
    
>  保険料について
    
▽  2004年10月
     厚生年金保険料を現在の13.58%(労使折半)から引き上げ、2017年度以降18.3%に
▽  2005年4月
    
◇  国民年金保険料を現在の月13,300円から引き上げ、2017年度以降は16,900円に
◇  フリーターなど20歳大の低所得者に国民年金保険料の納付を最大10年間猶予
◇  育児休業中の保険料免除期間を1年から3年に拡大
▽  2006年7月
    国民年金保険料の免除基準を4段階に拡大
    
    
>  年金額について
    
▽  2004年10月
    少子高齢化に応じ、年金額の伸びを自動的に抑える仕組みを導入
▽  2005年4月
    60歳~65歳の在職中の会社員の年金で1律2割カットを廃止
▽  2007年4月
    
◇  70歳以上の会社員の厚生年金を収入に応じて減額
◇  子供がいない20歳代の女性が受け取る遺族年金を5年に制限
    
    
>  その他
    
▽  2004年10月
    基礎年金の国庫負担割合を現在の3分の1から、2009年度までに2分の1に引き上げ
▽  2005年4月
    第3号被保険者が過去に届出を忘れた期間を救済
▽  2007年4月
    離婚時に厚生年金の分割を可能に
▽  2008年4月
    ・会社員の夫と専業主婦が離婚すると、夫の厚生年金を2分割
    ・保険料の納付実績や受給額の目安をポイントで通知

 

 

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